2009-03-13

計算最適化システム 「IOSO」No.3 多目的関数 (MOモジュール)

§3 多目的関数 (MOモジュール)

IOSO-NMはMulti-Objective、即ち多目的関数用モジュールを意味します。

[1] 複数の目的関数

最適化には、「評価基準を何に設定するか」という大きな課題が有ります。

例えば、構造物の最適設計では、基本方針として、

が教科書に採り上げられています。

課題を別の面から見れば、トレードオフの問題に帰着します。

例えば、流体中を移動する物体の形状決定に於いては、

という、同時には最適性を満足し難い要求仕様のバランスを考慮する必要が有ります。

複数の目的関数が相互にトレードオフを生じる場合を、

等と呼びます。
多目的適最適化で得られた解の集合をPareto set、その値の包絡線(界面)をPareto front[3](パレート曲面[4])と呼びます。

[2] 決定論的手法に於ける対応

先号の§1で分類した計算手法の中、決定論的手法[Ⅰ]では、単目的関数(スカラ関数)にモデル化するのが現実的な対応です(文献[4]p-117、文献[8]p3/10)。

具体的には、

[3] 確率論的手法[Ⅱ]に於ける対応

IOSOは、ランダムな検索法の性質を持っています。従って、同時に複数の最適値の候補を検出し、目的関数毎に評価順位を更新する事は、それ程には計算機負荷の累加を生じるものでは有りません。

[4] GUIの対応

IOSO-NMはdefaultで最大20個のPareto setを算出します。 目的関数の入力方法は、GUI上のscript、又はuser-subroutineのFortranで記述する分かり易い設定です。


図4-1 複数の目的関数のGUI上での記述


図4-2 Pareto set数の指定

[5] 検証例題

(5-1) 課題の設定

文献[5] [6]に提示された「2目的関数」の関数形を採用します。 玉置の提案した「パレート解が非凸型になる」[6]設題です。 Pareto set数は40に設定しました。

目的関数

制約関数

原文には記述されていませんが、(通常の規約に従い)min問題と解釈します。

設計変数

Eq.(5-7)は㈱シムサイドが設定しました。
制約条件g(x) :(Eq.(5-3)~Eq.(5-6))は線形であり、設計変数の段階で、

と簡単化出来ますが[6]、一般的な場合を想定し、ブラインドテストを兼ねて、制約条件の段階で設定しました。

(5-2) GUIの設定


図5-1 目的関数、制約関数の設定

「線形化」に関しては、後掲予定のAppendix-[1]を御参照下さい。

(5-3) 計算結果

先ず、文献[4] [6]の結果を転載します。本文を引用の際は原著の出典と著者を明記し、著作権の保護に御留意をお願い致します。


図5-1 白瀬の報文[4]


図5-2 岡田の報文[6]


図5-3 パレート曲面

確認の為に、

の拘束条件を付けてmin_f2(x)の解(単目的関数の問題)を求めると、下図が得られます。


図5-4 f1≒2の拘束条件に対するf2の履歴

さらに、

の場合は下図です。


図5-5 1<f2<2の拘束条件に対するf1の履歴

何れも、設計変数および相手の目的関数による拘束に依り、許容範囲は可動の余裕が少なく、事実上 固定されています。トレードオフを示すものです。

(5-4) Pareto setに関する優先度の設定

GUIには、トレードオフに関する優先順位を付ける設定が有ります。


図5-6 パレート集合に対する優先度設定画面

試みに図5-6に於いて、「f2を優先」に設定致しましたが、後出の図5-7の"weak Pareto"の領域に大きな変化は見られませんでした。

(5-5) 目的関数の線形化に関する追試

ここでは、図5-1に示した線形化を行わず、非線形関数で追試を行います。


図5-7 目的関数の設定


図5-7 パレート曲線


図5-8 min_f1(x)に対するf2(x)の履歴

(5-5) 結語

スムージング等の後処理を行うことなく、図5-2と同様の滑らかなPareto frontが得られました。 図5-3に於いて、第1目的関数が、f1(x)≒2の極近傍を除いては、文献[5],Fig.3と同様であり、ブラインドテストで大局的な解が得られました。 線形化を行わない場合、応答は鋭敏になり、図5-7で "weak Pareto" を捕捉できましたが、大局的にはスムーズではありません。「線形化」の選択は解析目的に依存すると考えています。

一般論としてIOSO(Indirect Optimization on the basis of Self-Organization)のRSM法はGA法よりDirect callが少ないと考えられます。 本検証計算に於いては、図5-1の如く、比較的簡単なGUI設定で実行致しました。 以上から、設計支援用システムとしての有用性を示すものです。

追記

「線形化」に関しては、後掲(予定)のAppendix-[1]を御参照下さい。

引用文献

  1. IOSO Technology Center. About us.
    http://www.iosotech.com/ioso111.htm
  2. wikipediaの中で「パレート」を検索すると、経済学者「ヴィルフレド・パレート」がリンクされています。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/ヴィルフレド・パレート (ダブルクリックせず、カタカナ(2byte-code)の部分を含めてURL表示のカラムにcopy&pasteすると直接linkされます。 googleの場合、下記です。

  3. 本ニュースレター後掲(予定)の「用語解説」の "Pareto" の項を御覧下さい。
  4. 坂和正敏、「非線形システムの最適化」、森北出版、1987.
    p-117(§7.2 スカラー化手法)
  5. 白瀬、「遺伝的アルゴリズムの多様性維持に関する研究」
    http://www.akita-pu.ac.jp/system/mise/cad/H15Poster/shirose.pdf
  6. 奥田、「多目的GAにおける選択手法によるパレート解への影響」
    http://mikilab.doshisha.ac.jp/dia/monthly/monthly00/20000731/okuda.pdf
  7. 奥田、「多目的遺伝的アルゴリズムの選択手法における解への影響」
    http://mikilab.doshisha.ac.jp/dia/monthly/monthly01/20010423/10_okada.pdf
    (上記 "okada" はtypoでは有りません。上記URLでhyper-linkされています)
  8. wikipediaの中で「ダウンフォース」を検索すると、リンクされています。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/ダウンフォース
  9. 大林茂、「第2章 CFDによる最適設計の動向」
    http://www.ifs.tohoku.ac.jp/edge/publications/chap2.pdf